HiKaRu

第31号(File #31:2007.01.31発行)


◆ 〜ちさと〜 Vol.4◆


とどのつまり、HIKARUには結局この二人、ちさとと風太郎の他には心を許しき
れる相手はいない。

家族と言えども、大人としての自立心が芽生えた頃には、もはや遠い存在にな
っていた。

HIKARUとは三つ違いのそして聞き分けの良いまた優等生の妹に、両親と若く
して連れ合いである祖父を亡くした祖母家族全員の情愛は一身に注がれてきた。

幼少期にはHIKARUを溺愛してくれた父親とも折り合いが次第に取れなくなり、
彼の価値観とは正反する生き方を選んだにもかかわらず、経済的な負担を
強いてしまうことが幾度となくあったり、一時生活を破綻させて実家に居候を
した数年前以降は、もはや実質上家族の縁が切れたにも等しい間柄に
なっていた。

HIKARUにとってはちさとと風太郎が友であり、そして家族でもあり、二人には
もはや何らの遠慮も要らないし、HIKARU自身すらも許容しきれないあるがままの
自らの在り様のすべてを晒すことができ、また二人もHIKARUに対して同様の
包み隠さない態度をとってきたし、お互いにそれを許容し合ってきたのだった。

特に同性のちさととは、思考や言語を越えた感情や生理面でも認知し合って、
どこにいても何をしていてもお互いのほぼすべてを直感的に把握し合うことが
できた。


ちさとは、HIKARUの基準をも大きく越えて自らを解放しきって日々を過ごしている。
他人にどう見られようと思われようと気にも留めないから、彼女の在り様や言動は
型破りで、道徳心のかけらも持ち合わせてはいない。いい加減で、気が多く、
そして飽き易く、だからこそなのか女としての魅力には溢れていた。

ちさとは頭も身体も衰えをしらず、刻々と周囲が変遷を重ねようとも、若々しく颯爽と
そして飄飄と思うがままに彼女の人生を闊歩していた。

ちさとはガムを噛んで捨てるように、相手を構わず気が向けば誘惑し、飽きれば
切り捨てたから、彼女が通り過ぎる後には人のいざこざ、家庭の崩壊や経済破綻が
渦巻くことになった。畳の上では死ねない、そのうちに恨みを持つ相手に殺される
運命とHIKARUは感じている。

HIKARUも、ちさとほどではないにしろ道徳感の欠落した欠陥人間だから、これまでも
それぞれが関係した男の多くを結果的に共有することになったし、時には同時に
複数で関係し合うこともあった。あるいは結果的に奪い合うこともあった。

そのうえちさとはバイセクシャルだから、彼女の周囲では老若男女問わず多くの人々
が常に右往左往をすることになった。


ちさと/Vol.5に続く


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