HiKaRu

第13号(File #13:2000.01.11発行)

◆ 〜さやか〜 Vol.2◆

三人の子供達の中で、特に中学に入った頃から早熟だったさやかとはその頃から不思議と馬が合った。明るく人見知りをしない自由奔放なさやかとは対照的に、次女のはるかは陰鬱で情緒不安定なところがあり、長男のカリムも口数の少ない何を考えているのか解らないような少年だったこともあり、はるかやカリムとはほとんどHIKARUは会話をしたことがなかった。

さやかは六年一括教育の私立女子中学・高校を出て、現在はコンピューターグラフィックを教える専門学校に通っている。さやかは卒業後企業に入る意志がないようで、在学中からインターネットを活用して自分のホームページに作品を公開し、中小企業や個人相手のホームページを作成代行したり、広告代理店や雑誌社などから時々発注される小さなCGやDTPの仕事を手掛け、フリーランスとして独立することを目標にこつこつ実績を積み重ねている。

出張が多くいつも不在がちな潤くんと、時々中長期の取材で家を空けるカリン、もう長く寝たきりの祖母の下で、妹と弟もあてにはならず、自分がしっかりするしかないとの気持ちからか、週二回のハウスキーパーと隔日の介護ヘルパーはあっても、さやかは家事全般をとりしきってきたし、祖母の身の回りの世話もよくみてきた。こうした環境も、さやかが就職をしないでSOHO形式の在宅ワークを目指している大きな要因の一つだった。

早くから自立心に目覚め、直感的なひらめきや個性的な感性が光る派手な外見と、反面沈着冷静に物事を一つ一つ確実に完結させていく計画性や忍耐力も備わる内面とのバランスがよくとれており、大人びたさやかにHIKARUも時々カリンと同様に説教されてしまうようなこともあった。母子ほども歳が離れていても、いつまでも落ち着かないでふらふらしている姉のHIKARUとしっかりした妹のさやかといったような関係で、久しぶりに会えば最初は多少ぎこちなくても、すぐに打ち解けてお互い言いたいことを遠慮せずに言い合えたし、さやかの弁にHIKARUが学ぶような場面も珍しくはなかった。

普段通学以外に出歩くことが少なく家事に追われ気味だというさやかと、あれこれ洋服から雑貨や日用品に至るまであちらこちらでショッピングをし、代金はHIKARUが持つつもりでいたのだが、さやかはすべての支払いを自分のクレジットカードできちんと済ませた。HIKARUの行きつけの寿司屋とバーでの支払いだけはHIKARUがして、別れ際にお互いの携帯電話の番号とメールアドレスの交換をし、「潤くんはきっと読むはずだし、さやかちゃんには返事があると思うからメールを送ってみたら」と、タクシーに乗せ潤くんのメールアドレスのメモを手渡そうとすると、さやかはこぼれるような明るい笑顔で、「私はもう心配してませんし、潤くんが帰ってくるまで邪魔をしないで大人しく待っていますから・・・。HIKARUおばさま、今日は本当にありがとう。おやすみなさい」 メモは受け取らないまま、さやかはそのままタクシーで走り去っていった。またさやかに一本とられたかとHIKARUはその場で苦笑しながら、実は中断したままの仕事を片付けるために会社に戻るタクシーを探した。

なおこさん/Vol.1に続く


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