HiKaRu

第2号(File #2:1999.10.25発行)

◆ 〜風太郎〜 Vol.2 ◆

風太郎にはたくさんの社会的な顔があり、出会いかかわる相手によってそれら様々な顔を使い分けている・・・・・、いや彼が使い分けているわけではなく、 かかわるそれぞれの人々自身を写してみせる彼が、まったく別人のようにあちらこちらに存在するという奇妙な状況が生まれているということだろう。

彼はその時々の人や環境に自然に順応するだけで、HIKARUにはいつどこにいて何をしていても彼は同じ風太郎で何も変わらないが、仕事などのその時々で彼に求められる役割を離れた風太郎自身を知らない人物には、彼のほんの一つの側面しか見えてこないのだ。

事実彼を知る別々の人が出会うと、そこに共通の認識を持ち得ず彼についての会話が成立しないような場面に、HIKARUは度々遭遇してきた。

実際のところHIKARUが会う度に風太郎は、いつも違ったところで違ったことをしていた。ギターの弾き語りやピアノ弾き、バーテンダーになったかと思えば 厨房で料理をしていたり・・・、絵を描いていたはずが不思議なオブジェを創っていたり・・・、はたまたスティルカメラを片手にもう一方でムービーカメラを回しながら世界を旅している・・・、モデルやタレントや歌手のプロモートやマネージメント、コンサートなどのイベントプロデュース、芸能人のエッセイやドラマシナリオのゴーストライター、飲食店やブティックなど商業空間のプロデュース・・・、工事現場の人足、高層ビルの窓拭き、ホテル客室清掃、ガードマン、タクシードライバーなど転々としていたかと思えば、いつの間にか商社マンになって海外各地に駐在していたり、さらには日本国内はもちろん世界各地にいくつもの現地法人を経営していたり・・・、はたまた様々な企業のビジネスコンサルタントやそれら企業に関係する資金をあちらこちらに移動して利益をあげていたり・・・、かと思えば何年もまったく仕事をしないでいたりもする・・・。また寺や教会に入っていたこともあれば、拳法やムエタイなどの武術の修行にアジア各国を放浪していたりもした。

また風太郎はほとんど荷物を持たず、定まった居所もない。彼の持ち物といえば、衣類の詰まった人一人ほどもの特大ボストンバッグが二つ、大中小の様々なバックが詰まった大きなバッグが一つ、パソコンや周辺機器、カメラやミニステレオなどが詰まったやはり特大のハードケースが一つ、これですべて、ずっと変わっていない。

風太郎には世界のあちこちに友人、親や兄弟、女と子供がいて、彼は家族同様に彼等に接している。子供たちにいたっては、どの子が本当に彼の子供なのかもHIKARUにはまったく判らないし、彼自身気にもしていないようだ。それぞれの国のそれぞれの家族に溶け込んで、里帰りをする息子のように、海外出張から戻った夫のように、陸に上がった船乗りの父親のように、どんな場面においても自然な優しい素顔を見せる風太郎は、いつもどこででも穏やかな愛に柔らかく包まれている。

こんな風太郎だから、彼は前触れもなく突然HIKARUの前に現れては、気が付けばまた消えている。いつも一緒にいる時もあれば、何年も行方が知れないこともある。突然航空券とトラベラーズチェックが送られてきて、世界のあちこちで待ち合わせをして一緒に旅行をしたりするようなこともある。不確かなようであっても何より確かな実感が持てる風太郎との関係がHIKARUは 好きだし、遠くにいるのにいつも身近に感じる風太郎の存在は、もうHIKARUにとってもHIKARU自身の一部となっていて、風太郎を通して見る様々な事象やHIKARUも知らなかったHIKARU自身を追い続けたことが、HIKARUを形成する大きな要因となったことも確かなことであり、またこの頃ではHIKARUの存在が、これからの新しい風太郎を創っていく要因の一つになることも確かなことに思える。

風太郎/Vol.3に続く


hikaru home