●・・・・・
HiKaRu
・・・・・●
|
第3号(File #3:1999.11.01発行) ◆ 〜風太郎〜 Vol.3 ◆ ベッドのHIKARUの足もとで横向きで壁にもたれて座ったまま、風太郎はずっと眠らずにいたようだ。まだ半分ほど残っていたはずのバーボンのボトルとグラスがわりのマグカップが空になって彼の脇にころがって、その横の吸い殻でいっぱいになった大きな灰皿からは、灰が白いシーツにこぼれてしまっていた。 優しい温もりを感じて眠りについたはずの彼の存在がいつの間にか消えたことで目を覚ましたHIKARUは、夜明け前の窓からの微かな青白い光の帯の中を柔らかに幾重にも織り重なって漂う煙草の煙をぼんやりと眺めていた。 彼はつぶれた青い煙草のパッケージからひしゃけて曲がってしまった最後の一本をとりだし火をつけた。ライターを閉じる乾いた金属音が夜明け前の静寂に大きく響き、オイルと新たな香ばしく甘い煙草の香りが部屋全体に漂い、眠っていた幾重もの煙の層を大きく静かにくゆらせゆりおこした。 「ねえっ・・・、もしHIKARUのことを気遣ってくれてるんだったらもう何も気にしないでほしいな・・・」 こうしてある日唐突に風太郎とHIKARUの関係は始まった。そしてこのHIKARUがHIKARU自身を探し求める長い旅の物語もここから始まる。 |
hikaru home |