HiKaRu

第29号(File #29:2004.12.31発行)


◆ 〜ちさと〜 Vol.2◆

何時しかバーのスタッフもあがってしまったようで、レジを閉めてキャッシュレポートを作成するマスターと私達三人だけになっていた。

「僕もまだしばらくかかるから、ゆっくりしてていいよお。好きなもの飲んでてていいからあ」
マスターがレジの奥から声をかけてくれた。

結局この二人なのか・・・、HIKARUは心の中で一人苦笑する思いだった。自分でも驚くばかりのつい今しがたまでの喧騒、自分にはこれほど多くの愉快な友人がいたのだと感慨にふけるも一時(いっとき)の間(ま)、ふと我に返れば今HIKARUの目の前にはまたいつもの風太郎とちさとの二人が・・・、私は一体何をしてるんだろう???、我に返ってHIKARUは、深い溜息をつくほかはなかった。

「さすがに疲れただろ、HIKARU」
風太郎がゆっくり細く香ばしい甘い香りのゴロワーズの煙を吐きながら言った。
「そんなことないよ。ちょっと他事考えてただけだよ」
HIKARUは空いた三人のシャンパングラスとブーブクリコのボトルを手に立ち上がった。
ちさとが風太郎のラップトップのモニターを覗き込みながら感嘆の声をあげる。
「それにしても大勢集まったよねえ」
「聞いてもいい?、これで結局いくら会費は集まったの?」
片肘をついたままちさとは風太郎を見やりながら尋ねた。
「時々大口もあるんだけどさあ、大抵は渋いからね、50くらいの持ち出しだね」
「50!?、それって50万ってこと?信じられない・・・、ばっかじゃないのお!?」
唖然としたちさとは大袈裟に頭を抱えてテーブルに突っ伏してしまった。

HIKARUはカウンターに入るとテーブルに四つのロックグラスを並べ、アイスペールに残っていた削りだしのラウンドロックアイスを入れて、フリーザーからホワイトラムババナクラブを取り出して順々になみなみと注いだ。何度か普段からカウンターに入って勝手を知ったるHIKARUは、スクウィザーで丸ごと一つずつのライムを絞ってそれぞれのグラスに加えて軽くステアした。

ちさと/Vol.3に続く


hikaru home